ハコスチをもとめて赤久縄へ

アルマス

2017年12月20日 19:06

10月4日
野反湖の夜明けは、昨日から続く雨と濃霧に包まれている。
天気が良ければ2日間野反湖で釣りをするつもりでいたが、諦めて撤収することに決めた。
しかし、このまま帰るわけではない。
密かに別プランも考えていた。
それは、以前から行ってみたいと思っていた管理釣り場、赤久縄への釣行である。
赤久縄も野反湖と同じ群馬県にある管理釣り場である。
何と、半ネイティブ化した大型ハコスチとのダイナミックなファイトが楽しめるそうだ。

普段は諦めの悪い私だが、野反湖と赤久縄の両天秤ならどちらに傾いてもウキウキである。
赤久縄は1日券と午後券があり、ゆっくり出発して午後券で入ることにする。
朝食を済ませ、焚火で暖を取りながら鈴木さんのコーヒーをゆっくり楽しむ。
撤収の億劫さに負け動かぬ体に、鼻腔を抜けるコーヒーチェリーの香りがやる気を喚起してくれた。

ぱぱっとテントを撤収し、調理場を掃除したら荷物をリヤカーに積み、また来ることを誓いテン場を後にする。
昨日来た道をえっちらおっちら歩く。
車に着き、荷物を積んでからカーナビをセットすると、カーナビから驚きのアナウンスが。
所要時間4時間!
現在時刻は8時半であり、赤久縄でゆっくり昼食を食べてから釣りと考えていたのだが厳しそうである。
同じ群馬県だからそんなに時間はかからないだろうと高を括っていたが誤算であった。

しばしドライブを楽しむ。
建設中の八ッ場ダムの通行止めがナビに入っておらず、少々迷いながらもなんとか赤久縄に到着。
これがまたとんでもない山の中にあるのだ。
途中、車1台しか通れないような狭い林道をひた走り、がけ崩れで道の半分が埋まった個所を注意しながら通り、本当に道が合っているのか不安になる頃、辿り着く。



この看板、どこからどう見ても定食屋のそれである。
看板だけを見て、ここが管理釣り場であるとは誰も思わないであろう。
赤久縄は食事も美味しいらしいので間違いではないのであろうが・・・。

車を駐車場に止め、タックルを準備し建物の方へ向かってゆく。
古民家風の趣のある建物が受付のようだ。
受付の前には餌釣り用のポンドと思われる池があり、ニジマスが泳いでいる。



中に入ると目の前に囲炉裏があり、ニジマスが串に刺されて焼かれていた。
ここは釣った魚を調理して食べさせてくれるようだ。
釣りを終えたと思われるおじいちゃん達が、囲炉裏を囲んで一杯やっていた。
朝から来て、釣った魚を肴にここで一杯やるのも悪くないな。

受付で午後券を購入し、ダム湖で大物を狙いたい旨を伝える。
何と、ルアーとフライのエリアは車で移動した先にあるとの事。
受付にタックルを持ってくる必要は無かったようだ。
出際に受付のおねえちゃんから、「ダム湖はこの時間ルアー厳しいですよ~」と、有難い情報を教えてもらう。
「あんたルアーなの?ふふん、きっと釣れないわよ?」と予言されたようで何か悔しい。
しかし厳しいと言われれば俄然燃えるというもの。
教えられた方向に5分程車を走らせると、ルアーフライエリアの入り口が見えてくる。
少々入りずらい入口を入り、駐車場に車を停め、釣り場を目指す。

釣り場は大きく分けると「上流自然渓流エリア」と「下流ポンド風エリア」の2つにわかれている。
上流自然渓流エリアは自然の渓流そのもので、足場など一切無い。
ウェーディング必須のエリアである。
下流ポンド風エリアは渓流の一部を仕切って足場などを造成した、いわゆる管釣りのポンドである。
ポンドによって流れの強い場所や止水の場所、立ち枯れや大岩などのカバーやストラクチャーなど、多彩なシチュエーションがあり楽しめそうである。
どこも楽しそうなのだが、今回の目的はダム湖でのハコスチとの出会いである。
ハコスチはもちろん、40upのイワナや80upのドナルドソンも放流されているそうである。

そもそもハコスチとは何かというと、群馬県水産試験場が開発したニジマスの品種で、箱島系の雌とスチールヘッド系の雄の交配品種である。
ヒレが擦り切れにくい+野性味あふれるファイトが特徴の、釣りのために生まれたような品種である。
群馬県が商標登録しており、現時点では群馬県以外では釣ることのできない品種なのである。

他のポンドを横目に、最下流にあるダム湖エリアを目指す。
途中のポンドの水はクリアで、魚影も濃い。
どこで釣りをしても楽しそうである。
ポンドとポンドは渓流を仕切って作ってあるので、流れで繋がっている。
最も下流ではその流れがなだらかになり、ダム湖へと注いでいた。



イメージとしては、満水まで水をたたえた砂防ダムといった感じである。
おそらくは土砂で埋まった砂防ダムを浚渫して造ったエリアなのであろう。
水深は10m程あるようで、深すぎて底を見ることはできない。
しかし、水は澄んでいるため、泳いでいる魚はよく見える。

写真には写っていないが、フライマン2名、ルアーマン1名が先行していた。
ダム湖エリア自体は広いが、両サイドは山の斜面で立ち入り禁止であり、キャストできる場所は案外狭い。
左サイドから斜面沿いにルートがあり、足場が良くないもののそこまでは立ち入り可能らしいので、そこからキャストすることにした。

魚影も濃く、ライズも盛んに起きており魚の活性は高そうだ。
タックルは昨日の野反湖同様、カーディフNX S72Lにナイロン4lbと大物狙いである。
4,2gのスプーンから始めて様子を見る。
表層から少しずつレンジを下げ、最後はボトム付近まで探る。
しかし、ボトム着底からの巻き上げでショートバイトが1回あったのみである。
サイズを3,6gに落とすも今ひとつ反応が得られない。
一気にサイズを落とし1,8gも反応は得られない。
チェイスは盛んにするものの、バイトまでには至らない感じである。
他のアングラーも釣れてる気配は無い。
受付嬢の予言を払拭すべく、次の手を模索する。

魚のことは魚に聞け、ということで魚の様子をよく観察する。
ライズは盛んに見られ、大型個体のものと思われるダイナミックなものも頻発する。
手前のブレイクからシャローにかけて小型個体も大型個体も区別なく群れている。
手前でライズが起こることは少なく、ライズのほとんどは沖の方である。
ブレイクラインに沿って回遊する個体は大型のものが多いが、スプーンへのチェイスはあまりしない。
ライズしているということは魚の意識は水面にある。
おそらく水面近くを飛ぶ羽虫や落水した昆虫を捕食していると思われる。
食い気の立っている個体は沖合で虫を待ち、あまり食欲の無い個体は手前シャローで休んでいるといったところか。

観察の結果から、表層虫ルアーを選択する。
野反湖では車に忘れて使えなかったが、今日は準備万端である。
トップバッターはバスデイのぶん。
その名の通りカナブンを模したトップウォータープラグである。
割と重量もあり、遠くまでキャストできるすぐれものである。
ライズがよく見られる辺りにキャストし、まずはほっとけ。
着水した瞬間、ルアーに向かって浮上してくる大型魚の魚影。
ドキドキの瞬間である、が、10cmほどまで寄ったかと思うと見切って反転し、湖底へと消えてゆく。
さすが赤久縄のビッグフィッシュ、そう簡単に口は使ってくれないようである。
ならば残り10cmをアクションで誘い、口を使わせるまでである。
派手目に着水させステイ、寄ってきた魚に水面をもじもじするアクションで誘い、虫であることを信じ込ませる。
デカイ影がどこからともなく浮上してくる。
その影はルアーへとぬぅーっと近づき・・・ドバッと水面を割った。
きた!
ラインが水中へ引き込まれたことを確認し、合わせを入れるとググンといい手応えがロッドを伝う。
その刹那、大きな魚体がドバーン、バシャーン、ドバババーンとダイナミックに宙を舞った。
おおお凄い、これがハコスチの本領か。
ラインテンションを緩めないようロッドをしっかりとしならせつつ、ラインブレイクしないようにドラグを魚のパワーに合わせる。
突っ込みはまさに全力疾走といった強引なまでの勢いであり、そこらの管理釣り場で釣れる大型個体のそれを遥かに凌ぐパワーである。
クリアウォーターなので、水中を疾駆する魚体がよく見える。
ハコスチの躍動感をロッドで、視覚で、聴覚で堪能する。
ファイトの末、ランディングした個体は50cmほどの色彩鮮やかなハコスチであった。



ハコスチを初めて釣り上げたが、引きの強さを謳うだけあってそのファイトは非常に力強い。
ヒレも欠損が無く厚みもあり、魚体も引き締まっており色彩鮮やかである。
改めて素晴らしい品種であることを実感する。
家族へニジマスのお土産を約束していたので、この個体は持ち帰ることにした。

続いても同様にぶんで誘う。
どこからともなく浮上してくる黒い魚影。
静寂を湛えた水面にぶんの波紋が一定のリズムを刻んで広がる。
水飛沫と同時に反転し潜行する魚影。
引き込まれるライン。
ドラグ音と魚体のジャンプの音によって静寂は破られる。
先ほどの個体ほどのパワーではないももの、生命感あふれるファイトを展開する。



30cm程の個体であった。
これもハコスチなのであろう、先ほどの個体と特徴がよく似ている。
割と安定した形質を現す品種なのかもしれない。

完全に虫パターンである。
水面を割って出るトップの釣りはやはり楽しい。
受付嬢の予言を見事覆し、パターンを掴んで同様に釣ってゆく。
大型のハコスチばかりではなく写真のようなレギュラーサイズも食ってくる。





大型を狙って釣ってゆくにはどうするべきか、などと考えているとある瞬間からバイトが出なくなった。
何事かとルアーを引き上げてみると、ぶんに3mm程の穴が開いていた。
どうもそこから浸水しているようで、浮力が甘くなっていたようだ。
合わせがすっぽ抜けた際、足元の岩にぶつけたのだが、それが原因と思われる。
しかし不思議なもので、水面から少しでも沈めると一切バイトしてこなくなる。
いろいろ試してみると、完全に浮いているルアーにしかバイトが起こらないことも分かった。

ぶんは1つしか所持していなかったため、他のプラグも試してみる。
シケイダーなどの大型のものには反応を示さないようである。
あくまで「ぶん」サイズ以下じゃないと駄目そうだ。
しかも、食い気のある魚が居る場所までロングキャストが必要である。
ある程度重量があり、且つ小型のフローティングプラグ。

ほんとにピンポイントな答えに、答えを見つけられなかったらボウズもありうるなと、少し背筋が寒くなった。
マイクロシケイダーやくもルアーといったサイズがベストなようである。
しかし、あと一歩奥へキャストしたいのだがそこまで届かない。
ぎりぎり魚の反応は得られるものの、もう少し遠くまでキャストできればさらに良い反応が得られそうなだけに悔しい。
ぶんが優れた虫パターンルアーであることを改めて再確認させられた。

飛ばないならば、バチャっと派手に着水させて遠くの魚の気を引き、艶めかしいアクションと波紋で誘い込んでゆく。
マイクロシケイダーに黒い魚影が忍び寄る。
来い来い来い・・・自分も虫になりきったような気持ちで誘ってゆく。
バシャッと水飛沫が上がり、ロッドが大きくしなる。
魚体が大きく舞い、ドボーン、バシャーンと魚体が水面を打つ音が静かなダム湖に響き渡る。
ランディングすると、45cm程の個体であった。



続いてはくもルアーで誘ってゆく。
飛距離はマイクロシケイダーと同じくらいであり、ホットスポットにあと一歩届かない。
同様に派手な着水で気付かせ、虫になりきり誘ってゆく。
ヒットの度にポンドの静寂を破る激しいジャンプ。
めちゃくちゃ楽しい!



この個体も40upといったところか。
ファイトは通常の40cm台のニジマスの物とは一線を画す力強さである。
ハコスチの魅力にすっかり虜になってしまった。

40cm以上の個体は持ち帰り1匹までと制限があるため、最初の個体以降はリリースしているのだが、正直もう少し持って帰りたい。
お土産用にある程度大きく、かつ40未満の個体を何匹か釣りたいのだが、そううまく釣れないものである。
と思っていた矢先、40弱くらいのいいサイズがヒットした。



念のため測ってみると、41cm
残念ながらリリースサイズであった。
というか、持って帰る気満々だったので地面に直に置いてしまった。
魚には申し訳ないことをしてしまった。

気が付けば17時の営業終了時間である。
楽しい時間は過ぎ去るのが早いものである。
土産の魚を片手に、夕暮れの赤久縄を後にする。
ハコスチという素晴らしいニジマスの、躍動感あふれるダイナミックなファイトを堪能させてもらえた充実の半日であった。
ここに一人、ハコスチのファンが誕生したことは言うまでも無い。


*******本日の釣果*******
ニジマス 7匹 

タックル
ロッド  カーディフ NX S72L
リール  ストラディックCI4+C2500HGS
ライン  スーパートラウト アドバンス4lb
ルアー ぶん/チャカナブン マイクロシケイダー/クリア くもルアー/チャートバイトマーク



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